飯田市にお住まいで95歳になる熊谷かふねさんというご夫人がいる。
倫理法人会の仲間で、私と28年のお付き合いになる。
今から20年前ぐらいになるだろうか。スーパーバイザー対象の倫理の研修のため、毎月1回、倫理研究所に通った。
夜の研修のため、当日帰れる人が対象だった。 熊谷さんは飯田にお住まいのため、研修の対象外だった。
研修の学びがとても深く、私にとって素晴らしい研修だったので、かふねさんに一緒にどうかと誘った。
かふねさんもぜひ学びたいと、ある時から一緒に参加した。帰りは ボロ屋だが仏間に泊まってもらい、翌朝、妻が準備する粗末だが温かみのある朝食を食べ、 高速バスで飯田に変えられた。そんな毎月の研修がどのぐらい続いただろうか。
いつの間にかふねさんは母を知らない私にとって母のような存在になった
2019年、私が365日大学を発案し、2020年4月17日の 開校式にはかふねさんに記念講演をお願いする予定だった。
しかし、コロナに襲われ、リアルの参加は不可能になり、4月7日の開校式は中止にした。
365日大学は5月からzoomを使ってのオンラインで開校した。
かふねさんは「オンラインなら飯田から参加できる。嬉しい」と言ってくれた。孫たちが参加のための「おばあちゃんのためのITプロジェクト」を立ち上げ、パソコンを習得し参加してくれた。
2023年1月9日、妻が倒れた。
かふねさんからは何回も温かな励ましのお便りが届いた。
妻が生還し、私と2人の生活が始まった。
介護度5の生活も10か月を超え、妻は見違えるように回復してきた。
その状態を心配されているかふねさんにぜひ見てもらいたかった。思い切って高速往復6時間の自動車旅を実行した。
かふねさんの家の玄関をなんとかくぐり、茶の間に入った。
もうかふねさんの目には涙、涙、涙。「 私がわかる?。私がわかる?」。「わかります」と答える妻の顔を見て、「わかるの。嬉しい、嬉しい」とかふねさんの顔は涙でぐしゃぐしゃになった。
妻の目にも涙がこぼれていた。妻の涙は何を思い出しての涙だったのだろうか。
研究所から深夜帰ってくる2人を迎えた時の思い出が蘇ってきたのだろうか。
私も涙が止まらなかった。飯田に行ってよかった。
帰りに松代の自宅で風呂に入れ、車での疲れもすっかり癒され、「2人でかふねさんの元気なうちに行けたことが神様からの最高の贈り物だね」と感謝した。