「君の顔 冬のおめかし 山と共」
妻が脳出血で倒れて以来、私はどんな状態の妻も受け入れられる自分でありたいと願い、心を広げるために俳句を始めた。
先日、新聞で「浅間山初冠雪」の記事を見たとき、この句がふと浮かんだ。雪をまとった山のように、凛とした冬の化粧を妻の顔に重ねたのかもしれない。実際には、介護度5の妻は自ら化粧をすることはできない。洗面も着替えも、すべて私に委ねる。
それでも、「冬のおめかし」という言葉が自然と心に浮かんだのは、妻がかつて好んでいた化粧への思いを、私が代わりに感じ取ったからだろうか。
化粧ができないのは、私以上に妻自身が悲しいに違いない。だがその感情を言葉にすることができない脳の後遺症が、いっそう私の切なさを深める。
それでも妻は悲しい顔を見せず、朝、窓辺で「街路樹の紅葉が進んだね」と穏やかに私が語りかけると
「そうだね」と答えてくれる。
私はその声に励まされ、二人でゆっくりとストレッチを始める。静かな朝、白む空の下で、山も妻も共に冬の装いをまとい、新しい一日が始まる。