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サキベジブログ

大岡道の駅のお蕎麦


遠い過去になった大岡道の駅のランデブー

脳出血の手術から三年が経った。季節は巡り、暮らしは大きく変わったのに、変わらないものもある。片道一時間の道のりを走り、大岡の内場先生のもとへ通う習慣だ。手術前から続くこの通院は、私たちを支え、日々の軸となっている。

思えば、脳出血前の帰り道には決まって大岡の道の駅へ立ち寄り、天ぷらそばを二人で啜った。妻は天ぷらの衣が少しでも厚いと、くすりと笑いながら私に一口寄越した。その何気ない時間が、今はどれほど遠い日のあたたかさとなって胸に灯ることか。

いま、道の駅に立ち寄ることは叶わない。けれども、代わりに車の中で二人きりの昼食を取るようになった。朝、私がにぎった手作りおにぎりを膝の上でそっと広げる。口に運ぶその仕草のたび、私は「今日もここにいてくれる」ことの尊さを思う。

窓の外には、北アルプスの鹿島槍が白く颯爽とそびえ、初冠雪の輝きが冬の始まりを告げている。近くの木々は紅葉を終え、風にあおられた葉がぽろぽろと落ちていく。その舞い落ちるさまを見ながらの昼食は、車内という小さな空間を、まるで私たちだけの四季の劇場に変えてくれる。

言葉は以前より少なくなった。それでも、時折交わす短い会話は、むしろ手術前より深く、確かだと感じることがある。静かな車内に満ちるのは、かつての賑やかさではなく、お互いをそっと抱きしめるような沈黙だ。

くすんだ道の駅の古びた古風のテーブルではないが、いま私たちを包むのは、自然の流れと、積み重ねた時間が醸す静かなぬくもり。二人で同じ風景を眺め、同じ空気を吸い、同じ一日を生きている。その事実こそ、私たちに新たに与えられた幸せのかたちなのだと思う。