おはよう。どう?先日の看護師さんは「秀子さん手紙読めるかもしれませんよ」と、うれしい言葉を発してくれたが読めたかな。読めたらうれしいな。でも大丈夫。読めなくとも手紙が秀子の寝ている脇に置いてさえあれば、私たちは一体だから。
I have no plans for today. 今日は何も予定がない。日曜日になるとあなたは必ず、今日何か予定がある?と聞いてくる。冬に入る前は「畑に行ってこれをやろう」といって、朝食終わった後は二人で軽トラに乗って必ず畑に向かった。
交通量の少ない新しいバイパスができ、すれ違う車もあまりなく、車の中での会話はいつも「私たちは幸せだよね。周りの山は緑いっぱい。田んぼも畑も清清としていて、豊かな田園風景も楽しめる。軽トラとは言え、快適にスピードも味わえ、日曜日こうして夫婦二人で仲良くやることがある。最高。このバイパスは私たち二人のためにできたようなものだね。こんな贅沢な時間、働いているばっかしの時間かもしれないが、私達には贅沢な時間。社長を山本君に譲り、新しい体制でみんなもアスクの理念をしっかり守ってくれるので、こんな時間が持てる。ありがたいよな。」こんな会話を交わす。
振り返ってみると同じ内容の会話を毎回交わしていた。遮るものが何もない広いバイパスで夫婦二人を乗せた軽トラが走る。だからこんな感慨が生まれた。車がベンツだったら、こんな感慨は生まれなかったかもしれない。ビフテキを食うわけでもない。首にダイヤモンドのネックレスをつけるわけでもない。ダイヤの指輪をつけるわけでもない。洒落たドレスで着飾るわけでもない。首にまいているのは、豆絞りの手ぬぐい。着るものは洗いざらしの木綿の長袖。でも私達には誰にもない私達だけの宝物を持つ。
毎回同じように目に飛び込んでくる田園風景。時間により、季節により、変化を生じる自然のグラデーション。 軽トラで、この服装で、この夫婦だからこれらが「宝物」と映る。これからはこんな贅沢はできないかもしれない。今日はせっかくの日曜日だがI have no plans for todayだ。 秀子がいないので今日は特にそう感じる。でもこれからの日常はきっと二人のことだ、違う喜びを見つけるのに違いない。私は必ず新しい喜びを見出す。秀子に提供する。だから安心して今は命があることに感謝しよう。
私の毎朝の墓参はパワーを上げた。神棚と仏壇への祈りのパワーも上げた。「お願い」から「決意の宣誓」に変えた。「必ずあなたは帰ってくる。」その一念を毎朝、毎晩、神棚と仏前に誓う。お願いするのでなく、決意を伝える。秀子の力と私の力、敬史、暁代の力、多くの人の応援がある。秀子は必ず戻る。信じている。頑張ろう。
2023,1,15 5:25 秀一