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サキベジブログ

 秀子通信⑩ -与えられた命


おはよう。どう?今朝も私はこうしてパソコンに向かう。そして秀子との時間を共有する。今時間は4時半。ありがとう。パソコンに向かってあなたを思う時間が持てるだけで私は幸せだ。呼びかけられる時間を持てることがうれしい。こんな時間が持てるのだ。人生にこんな時があっていい。命が与えられているからだ。うれしい。

昨日も同じように手紙を届けた。同じようにあなたの状態を聞いた。

「眠っている時間が多いです。食事の時の呼びかけに対しては、返事をしてくれますが、ほとんど目をつむっています。小山ですという言葉は聞き取れます。本人は小山秀子とまで言っているかもしれませんが、秀子までは聞きとれません。手紙は今読ませていただいています。今日も手紙ありがとうございます。」

看護師さんから手紙のお礼を言われる。看護師さんもあなたと一体なのだ。

お礼を言うのは私のほうなのに。うれしい。あなたは誰にも愛されている。

出しゃばらず、ただそばにいるだけ。求められれば何でもできるあなた。でも自ら先頭きって飛び出ていくタイプではない。会社にいても一般的な社長夫人ではない。秀子さんだ。だから私もやりやすい。あくまでも秀子さんの仕事をやるだけ。だから周りもあなたに気を遣うことはない。淡々と仕事を依頼し、終わる。

いわば空気見たいな存在だ。家庭におい手も常にそうだ。重要な決定をするときも判断は常に私に委ねる。出た結論に文句を言ったことは一度もない。

敬史が中学を卒業したとき進路をアメリカの高校にすると決めた時も、あなたは少しも反対しなかった。でも実際その場面になりフィラデルフィアのウイルミントンのキャシーさんの自宅に行き、数日間すごし、日曜日キャシーさんが私たち家族を付近の教会に連れて行ってくれた時、あなたの泣く姿を見て、キャシーさんの友達が、キャシーさんに「この女性はなぜ泣いているの?」

ほんとに敬史と別れたフィラデルフィアの空港でのあなたの号泣。

15歳の息子を一人異国に置く、母親の思い。涙がすべて表現していた。あれからもう30年近くたつ。敬史のハワイでの結婚式、暁代のニューヨークでの結婚式。素晴らしい体験を子供たちは私たちに与えてくれた。

そして今年の正月の息子からの報告。5歳の「はるたん」が小学校をマレーシアのインターナショナルスクールに入れるという。私たちにまた新しい喜びを与えてくれた。「来春はマレーシアね」とあなたは言った。「20歳のはるちゃん」をみたい。そこまでは生きたい。とあなたは言った。たった15年後だ。大した年数ではない。与えられた命、精いっぱい生きよう。

2023,1,19 5:20 秀一